建築家 竹内美穂+加藤純ー作人
特別編 | 建築家の事務所訪問
特別編 | 建築家の事務所訪問
夫婦で設計されている作人(さくっと)
作人らしい建築スタイルは、世代を超えて支持を集めています。
実は、今回インタビューをしてはじめて、
IFAの山之上のギャラリーも作人のデザインだと知りました!
そのあたりも含めて、作人の事務所にて伺ってきました。(現在は移転されました)
これまで作人の数々の作品を見てきましたが、事務所に伺うのははじめての機会。
どんな事務所だろうと思いながら訪ねると…予想しなかった建物にたどり着きました。
枚方公園のレトロな街並みに溶け込む、とても歴史を感じる建物。
すっきりとシンプルなデザインが作人のイメージだったので、そのギャップに驚きます。
もともと歯医者さんだった大きな建物。今はとりあえず一部を改装して、仕事部屋としてお使いだそうです。
1年くらい休みがあったら、自分たちで全面リノベーションしたい!とおっしゃっていました。
共に大学で建築を学び、卒業後は設計事務所で経験を積んだお二人。
設計事務所の飲み友達だったそうです!
その後加藤さんは大学の恩師の別荘の設計に携わり、そのまま常駐の現場監督までやることに。
別荘に寝泊まりしながら、大工さんの仕事を手伝ったり、おさまりの図面を書いたり、構造事務所に通いつめたりと、貴重な経験を積まれたそうです。
竹内さんも事務所で着実に実務経験を積み、2002年に独立されました。
さて、なんて読むの?という質問も多い作人(さくっと)。由来を教えてもらいました。
あるフランスの哲学者が人間の定義として、考えるのが人=ホモ・サピエンスという定義に対して、「ものをつくる人」が人間=ホモ・ファーベルであると規定したそうです。
二人の属性として、建築に限らず「何かをつくる人」でありつづけようという気持ちで
「つくるひと」を漢字にした「作人」と命名。
読み方は後で考えたそうですよ。フランスの哲学者が出てくるとは…!なかなか深いです。
さて、独立してしばらくたった時、突然、室長菊井が二人の事務所に訪れました。IFA創業間もないころです。
そこで菊井が枚方の街を変えたい!日本一の街にしたい!と熱い思いを語りまくり(笑)
生まれも育ちも枚方の加藤さん、自身の枚方をはるかに上回る菊井のパワーに感動し、
夫婦共に「この人と一緒に仕事がしたい!」と思ったそうです。
そこから、大垣内町のコンセプトハウス2(写真)やIFAの山之上ギャラリーの設計を経て、
数々のお住まいの設計へと歴史を重ねていくことになりました。
男性の意見、女性の意見が共に共感できるという点で、夫婦での設計はお客様に安心感を与えます。
お二人で設計を続けていくにあたって、それはもう、数々の大変な苦労を乗り越えてこられたのだと思いますが…。
長年二人でやってきて、仕事の役割分担、家事の役割分担も今の形にたどりついたそう。
実は、家事分担では物干し、掃除、片付けなどは夫である加藤さんの役割。
だから設計においても、メンテナンスや片付けのこと、掃除のしやすさなどは、特に加藤さんが細かくこだわるのだそうです。
作人の設計したお住まいは、収納や洗濯→干す→しまうの動線などにこだわりを感じていました。
そこは加藤さんのこだわりも詰まっていたんですねー!(写真はSUIMON-枚方宿街道に投じる一雫-)
インタビューを続けるにつれ、作人のつくる家と、事務所のギャップについて聞きたくなりました。
ご夫婦ともに、事務所に見られるように、古いもの、古くからの建物、時間を経て生まれるものや味わいに魅かれるそうです。
とはいえ、新築で家を建てるときにそのような古さを表現するとただのフェイクになってしまいます。
そこで、新築を設計するにあたって作人は、“古くからの建物の良さ”を紐解いてみたところ、
日本の建物の構成のわかりやすさや、逆輸入的な見方でいうとミニマリズムの美学というところにたどりついたそうです。
だから設計する建物は、極力シンプルに見えるよう、すっきりとしたデザインへと向かっていきました。
この古い事務所ととてもシンプルでモダンな作人の作品は、
二人が共通して好きな、古い日本建築に見られる美学に通じているんですね。
とっても嬉しそうに、海底で拾ってきた板を見せてくださった加藤さん。
長い時間をかけて錆びが重なって凹凸になった板の表情にキュンとなるそうです(笑)加藤さんワールドです!
写真はIFAの沖縄建築巡礼の旅にて、加藤さんが撮影した1枚。
この写真に添えた加藤さんの言葉です。
「石積みの芽生え。他の城跡のように自然に還ることは、
形あるものすべてにある美しさ」
作人のお二人のインタビュー。
ちょっと深くて、私の表現力ではうまく表現しきれていないところがあるように思います。
なので是非一度、ご本人とお話ししてみて下さい!
作人ならではの暮らしの提案を、一緒に考えて下さると思います。
お忙しいところ事務所突撃という、無理なお願いを快く受けて下さった作人のおふたり、ありがとうございました!