こんにちは、アシスタントの中井です。
今年は早くも梅雨入りとなりましたね。湿度の高い、蒸し暑い日が続くのかと思うと、梅雨明けの夏を恋しく思います。
さて、そろそろIFA通信の発行時期だなぁと思い、過去の紙面を振り返っていたところ、
2016年11月号で掲載した建築家・作人 加藤先生に綴っていただいた建築家エッセイに目が止まりました。作人さんらしく面白かったので、ブログに再掲載させていただきます。
毎日の中にあるちょっとした出来事も、建築家の目線で見るとどんな風景に写るのでしょうか。
※エッセイのテーマにより大きな蛾の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください。
写真:事務所でインタビューを受ける作人夫婦。>>その時のインタビューはこちら
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先日ある現場にて、大きな蛾をみつけました。
黒い欄に止まっていたので、容易に目に入ってしまいました。
その蛾の模様は<擬態>になっていて、樹の皮に非常によく似せてあり、もし樹に止まっていたら気付かなかったと思います。
<擬態>は、身を守るためや獲物を捕らえるため何かに錯覚させるという、生物の固有のスペックです。作り手の視点で見ると、錯覚させるという「目的」=「カタチ」になっているという<擬態>は精巧なデザインであって、個人的にたいへん興味深いです。
それを手法とする空間の考え方は、設計でも活用できるかも知れません。
そう言えば、ずいぶん前の日本の民家は、その地域の木や土や草を使い、構造はもちろん屋根や壁まで作っていましたから、外から見ても周囲にとけ込み、内から見ても景色に馴染むといった、ある意味「無作為の<擬態>」になっていたんだなぁ、と自己解釈しました。
日頃、空間を構成する際に、その「場」の目的に合わせた空間固有のカタチを模索して、ソトにいるような感覚、ウチにいるような感覚、どちらともある感覚などを取り入れようと、モヤモヤした気分になることがあります。
黒い柵に止まっていた蛾。そのスペックを活かせていない切なさが、自身のモヤモヤと妙に重なり、心に留った一枚です。
建築家 加藤 純
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当時読んだ時は少し難しく思いましたが、作人さんの事例を振り返りながら読むと、空間の在り方を模索している様子をなんとなく感じることができ、なるほどなぁ・・・と思いました。>>WORKSはこちらから
来週末6/20(土)21(日)には、八幡市で工事中の「大山崎を望む家」の新築完成見学会を開催いたします。
スキップフロア構造を採用し、この敷地の特徴である眺望を様々な角度で切り取りながら空間に取り入れているため、
道路から見ると窓のない家ですが、室内に入ると近郊の竹林の緑や大山崎・天王山の山並みなど豊かな景色を楽しむことができる開放的な空間となっています。
作人が創造する空間をこの機会にぜひ、実際にご体感ください。